2018年7月22日 - 福岡県の雷雨
記録として。記事は久々に書きますね…。
雷雨と被害
午後は福岡市を含む九州北部の一部で激しい雷雨となり、都市機能を巻き込んで影響が広がりました。
福岡空港
福岡空港では、悪天候により15:20頃からすべての便の離着陸ができなくなりました。
その後、恐らく雷によるものと見られる滑走路の路面のはがれが見つかり、16:34に滑走路が閉鎖され、補修が行われました。(17:38に再開)
このため、目的地変更や欠航・遅延が発生しています。
鉄道
博多駅付近にて落雷の影響による信号系統のトラブルが発生し、一部で運転見合わせや遅れが発生しました。
その他
福岡県内の一部で停電が発生しました。(現在は全て復旧)
大まかな状況
あまりちゃんと見られていないので、多分に推測を含むことをご了承ください。
西日本は高気圧に覆われており、全体に晴れて高温になっていました。
また、地上(海上)の高気圧の縁を回る、海上を吹いてきた湿った空気が南から流れ込んでいました。西にある台風も、湿った空気の流れ込みを強くしているものと思われます。
普通、高気圧がある場合には雲が成長しにくいわけですが、台風が接近したこともあって、九州は高気圧のど真ん中ではなく、「高気圧の縁」に位置していて、雲を押さえ込む力はやや弱くなっていました。
そこに、今日は湿った空気と高温、そして地上の局地的な風の収束が揃い、雲を押さえ込む力に勝って、局地的に積乱雲が発達したものと思われます。
風の収束は、初めは南から山地を避けて流れ込んできた風が、福岡付近で合流したものだったかもしれません。一旦強く上昇気流が発達してしまえば、周囲からそこに向かって吸い込まれる風になりますが、きっかけは。
少し細かく
レーダー観測
16時頃のレーダー画像と雷活動度画像を貼っておきます。(出典:気象庁 | レーダー・ナウキャスト(降水・雷・竜巻))
福岡空港のMETAR
福岡空港からも、HVY TS = Heavy Thunderstorm(激しい雷)が報じられました。
MOD TS = Moderate Thunderstorm(並/中程度の強さの雷)でも航空機の離発着に問題が生じる場合もあるくらいで、HVY だととても無理、という感じですね。強い雨や視程悪化、乱気流も伴いますし。
以下は福岡空港の観測をグラフ化したもの。
35℃前後の高温の中雷雨が始まり、ピークにて気温が急降下していますね。雨自体の蒸発による気温低下だけではなく、積乱雲の中心付近では雨やひょうと一緒に降りてきた冷たい空気が噴き出す場合があるので、その影響もあるでしょう。
前日同時刻との気温差(赤点線)をみても、普段にはない急な変化であることがうかがえます。
また、瞬間風速50ノット(約26m/s)程度の突風も伴っていますね。
風向の変動(南風→北寄りの風→南風)も顕著です。
視程も、激しい雨によって最低で100mまで悪化しています。
以下に METAR(抜粋)を貼っておきます。諸々の激しい変化がうかがえます。
- 15:00 - RJFF 220600Z 28009KT 9999 VCSH FEW030 SCT045 FEW045CB BKN/// 35/24 Q1007 RMK 1CU030 4CU045 1CB045 A2974 CB 10KM NW AND 20KM S MOV N
- まだ雷を観測していないが、積乱雲の存在を報じている。
- 15:08 - RJFF 220608Z 28009KT 250V320 9999 TS VCSH FEW030 BKN045 FEW045CB BKN/// 35/24 Q1007 RMK 1CU030 5CU045 2CB045 A2975 FBL TS 10KM S MOV N
- 近くまで雨雲が来ているが、空港ではまだ降っていない。弱く発雷しており、恐らく雷鳴や稲光を観測している。
- 15:20 - RJFF 220620Z 31008KT 9999 +TSRA FEW025 BKN045 FEW045CB BKN/// 35/24 Q1007 RMK 1CU025 5CU045 2CB045 A2974 FBL TS 8KM S AND 15KM N MOV N
- 空港に雨が到達。既に強く降っている。雷はまだ弱い。
- この後離着陸が停止。
- 15:30 - RJFF 220630Z 32012KT 9999 +TSRA FEW025 BKN045CB BKN070 33/24 Q1007 RMK 1CU025 5CB045 6AC070 A2975 MOD TS 5KM S-SW AND 15KM N MOV N
- 雷の活動が強まった。
- 15:37 - RJFF 220637Z 26009KT 0300 R34/1200VP2000N +TSRA FEW020 SCT030 BKN045CB 32/24 Q1008 RMK 1CU020 3CU030 5CB045 A2978 HVY TS OHD MOV N
- 雷の活動がさらに強まる。また、雷が真上に到達。
- 雨も強まったようで、卓越視程は300mまで悪化。滑走路視程計では、視程は1200m〜2000m以上の間で変化し、直近で大きな変化はなし。
- 15:41 - RJFF 220641Z 18034G50KT 0100 R34/0175VP2000D +TSRA SQ FEW020 BKN025 BKN040CB 28/22 Q1008 RMK 1CU020 5CU025 6CB040 A2977 HVY TS OHD MOV N
- 風が平均34ノット(約17m/s)、瞬間50ノット(約26m/s)に強まる。スコール(風の急な強まり)も報じられる。
- 視程はさらに悪化し、卓越視程で100mまで低下。滑走路視程計では、175m〜2000m以上の範囲で変化し、直近では悪化傾向。
- 雷は引き続き激しく、真上に存在。
- 15:44 - RJFF 220644Z 24010KT 190V270 0500 R34/0175VP2000D +TSRA FEW020 BKN025 BKN040CB 28/23 Q1008 RMK 1CU020 5CU025 6CB040 A2979 HVY TS OHD MOV N P/RR RI++
- 風速は落ち着くも、実際にはこの後も時々強まった。風向変動が大きい。(平均では240°=西南西からの風だが、190°=ほぼ真南〜270°=真西で変化)
- 雷は引き続き激しく、真上に存在。
- 気圧の急上昇を観測。(恐らく積乱雲中心からの吹き出し)
- 瞬間強度は30mm/hを超える激しい雨となる。
- 16:06 - RJFF 220706Z 35006KT 320V040 4000 R34/1400VP2000U TSRA FEW015 SCT025 BKN040CB 27/25 Q1010 RMK 1CU015 3CU025 5CB040 A2983 MOD TS OHD MOV N P/RR
- 雨は並の強さまで弱まる。雷も、引き続き真上にあるものの、中程度の強さまで弱まる。
- 風向は引き続き不安定だが、北寄りの風に変わってきている。
- 16:30 - RJFF 220730Z 08007KT 9999 -TSRA FEW010 SCT035 FEW045CB BKN050 26/24 Q1009 RMK 1CU010 3CU035 2CB045 5SC050 A2980 FBL TS 15KM N-E MOV N
- 雨は地面を濡らす程度の強さまで弱まった。
- 雷の活動も低下し、直上からは去った。
- 17:30 - RJFF 220830Z 18003KT 140V210 9999 TS FEW015 FEW040CB BKN/// 27/24 Q1009 RMK 1CU015 1CB040 A2981 FBL TS 20KM E MOV N
- 雨が一旦止んだ。
- 風は再び南寄りに戻った。
- 雷は観測されているが、さらに空港から離れている。
- 18:00 - RJFF 220900Z 16004KT 120V190 9999 -SHRA FEW030 SCT045 BKN160 28/25 Q1009 RMK 1CU030 3CU045 6AC160 A2980 LIGHTNING SE
- 再び弱い雨が降り始めたが、雷は伴っていない。
- 南東方向に稲光を観測。
(補足)
- VCSH = 周辺で降水あり
- FEW = 雲が少し存在
- CB = 積乱雲
- FEW045CB = 地上4500フィートに少しの積乱雲が存在
- CB 10KM NW AND 20KM S MOV N = 積乱雲が空港の北西10kmと南20kmの位置に存在し、北へ動いている
- TS = 雷、RA = 雨
- TS VCSH = 雷を観測、周辺で降水も観測
- TSRA = 空港にて雷を伴う雨を観測
- +TSRA = 空港にて雷を伴う強い雨を観測
- FBL TS = 弱い雷
- MOD TS = 中程度の雷
- SEV TS = 激しい雷
- SQ = スコール(風の急な強まり)
- OHD = 現象が空港の真上に存在
- RI++ = 非常に激しい雨(瞬間強度が30mm/h以上)
夏ですから
これからの時期、このような局地的で激しい雷雨が多く発生します。事前の予報が不十分な場合もあるので、敏感に情報を入手したいですね。
川遊びなど、河川の周辺にいる場合は、自分の上に雲が無くても、山で大雨になれば突然の増水に遭遇する場合もあります。状況に応じて、周辺の気象情報も確認しましょう。
また、雹(ひょう)を伴ったり、竜巻などの突風が発生したりする場合もあります。空が急に暗くなったり、異常な雲の動き、普通と違う風、激しい雷などを感じたら、できるだけ頑丈な建物の、窓や外壁から離れた位置に避難しましょう。